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2021年8月13日 金曜日

玉村豊男-1

 本は同じ作家を年代順に続けて読むと色々と変化が見えてきて面白い。そんな作家が玉村豊男。

 ちょっと読む本がなくなって、玉村豊男の1994年に出版された《私のワイン畑》を本棚から取り出した。初版の帯に《この本は1991年から'94年早春にいたるまでの「私のワイン畑」のありさまを書いたものである。「私のワイン畑」事始めは、まさに苦難の連続。土づくりのために資金もずいぶんつぎこんだ。晩霜にもめげず、ついに初収穫。この畑からどんなブドウができ、そこからどんなワインができるか。いずれにせよ、できたワインが私の運命なのだ。》と書いてあった。

 で、読み出してみるといくつか虫の話が出てくる。まずはブドウの葉っぱを食べるコガネムシ、ブドウの木を食べるコウモリガの幼虫、そして熟したブドウの実を食べるスズメバチ。植物を育ているからには虫はついてまわる。育てている人にとっては鬱陶しい話ではあるが、虫好きな人間としては興味津々。

 ならばと《田園の快楽》と《田園の快楽 それから》を読んでみるが、ここには全く虫は出てこない。ほぼ"ヴィラデスト"という農園の事ばかり。それはそれで面白いけど、あまり好奇心は惹かれなかった。私は多少根性が曲がっているので、あまり素敵でしょう!と言われると、興味を失ってしまう。田園の快楽というからには、快楽の代償も少しは書いてもいいのではと思ってしまうが、《田園の快楽》の世界は玉村豊男一人で造った世界ではないので、こうなるのもしょうがないのかもしれない。
 
 
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 続いて《種をまく人》これは41歳で吐血し、そこから回復し、"ヴィラデスト"の場所を見つけるまでの話。前半は読み応えがあったが、後半は不動産と建築の話。後半を読み進むうちに、玉村豊男の多面性が見えてくる。それはやたらと経済にうるさい。

 虫好きが経済の話をいくら読んだところで、あまり役に立たないが、玉村豊男の経済感覚はこれから先の"ヴィラデスト"の未来を予言するようで、そこが興味深かった。その兆候は《田園の快楽》でも見え隠れする。

 多分、この先を読み続けても、最初に興味を惹かれた虫の話はほぼ出てこないと確信したが、確認の為にもう何冊か読んで見ようと思っている。ワイナリーオーナー成功物語という遠い世界の話を少しだけ見てみるのも悪くはない。振り返ってみれば思えば遠くまで来たものだと言うことか。
 
 
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投稿者 店主 : 2021年8月13日 16:12